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■エネルギーライン「セン」を経絡で解明
タイ伝統医学で用いる身体を流れるエネルギーライン「セン」ですが、これを経絡で考えていこうと思います。どちらもエネルギーの通り道であって、身体の中央を通っていたり、センキチャナで見る限り、腹や生殖器の奥深くを通っていたりして、「セン」が身体の表面を走っているわけではないことがわかります。
一部のサイトによると、『「セン」は指で触って確認することができる』というコメントを目にしたことがありますが、手で触れられるのなら、解剖すれば明らかになるということです。現代においても複数見解があったりして明確になっていないというのは、これがエネルギーの通り道であって、解剖してもそんな器官は出てこないからです。タイ伝統医学の中でも、文献によると時代によって少しずつセンの通り道が違ったりしますので、少し混乱するところでもあります。ネット上で『触れることができた』のは、おそらく、筋肉や腱、神経などなのでしょう。
タイ古式マッサージは本来、最低でも2時間の時間を必要とします。それは、全身のエネルギーラインに対してくまなくアプローチをしてゆくからです。最近ではタイでも観光客相手に60分のタイマッサージがメニューとして掲げられていますが、これはそういった意味では亜流です。タイマッサージは、一部分ではなく、全身へのアプローチですから、部分的に行うものではありません。しかし、これでは仮にクライアントの体調がどうであれ、全く同じ施術をすればいいということになってしまいます。
タイマッサージを学習する際には、手順が決まっていますから、センに対する表現もファーストライン、セカンドラインという風に、実際のエネルギーラインの名称は通常出てきません。ただ、クライアントの体調を向上させ、症状を緩和させるためには、エネルギーラインそれぞれの意味を知ることはとても大切なことになってきます。治療家はもちろん、ボディワークのセラピストとして活躍する方たちにも、ぜひ見識を深めていただきたいポイントでもあります。
■東洋医学の経絡
経絡とは、体内をめぐることで生命活動を支えている氣や血の通り道で、全身に縦横無尽に張り巡らされているものです。経絡においては、氣と血のめぐりが滞ると、その経絡がつながっている内臓にも影響が及び、不調をもたらすのだということになっています。経絡は、体表部と内臓をつないでいて、体表部から刺激を加えることで、特定の臓器に刺激を伝えることができると考えられています。鍼治療や病気の診断などはこのメカニズムを利用したものです。
経絡には、太い幹にあたる「経脈」とそこから枝分かれした細い枝にあたる「絡脈」があります。経脈には「正経十二経脈」と「奇経八脈」があります。正経十二経脈は12種類あり、「手の太陰肺経 」→「手の陽明大腸経」→「足の陽明胃経」→「足の太陰脾経」→「手の少陰心経」→「手の太陽小腸経」→「足の太陽膀胱経」→「足の少陰腎経」→「手の厥陰心包経」→「手の少陽三焦経」→「足の少陽胆経」→「足の厥陰肝経」の順でつながっています。氣や血がこの順番で流れていることで、この12の経絡は体全体を循環するひとつの輪になっていると考えます。
■正経十二経脈とタイ伝統医学のセン、人体惑星試論からの検証
正経十二経脈は、経穴をつないだエネルギーラインで、東洋医学の治療において理解しておくべき最も重要なものです。正経十二経脈は、タイ伝統医学上のエネルギーライン「セン」に70~80%ほど合致しています。「セン」よりも細かく分けられていて、どのような症状に対して、どのラインを刺激するべきかが明確にされています。正経十二経脈を理解することで、セラピストが施術によって治療効果を上げることがより向上することでしょう。クライアントの身体に鍼を刺すことは鍼灸師の資格がなければできませんが、エネルギーラインに対して、温めることや氣を通すことによって同様の効果を発揮することができます。氣を体内の深いところにまで通すためには、表面の皮膚や筋肉を圧迫することだけでなく、呼吸法を学んでヒーリングワークとしてエネルギーをコントロールすることができるようになると、より一層の効果が発揮できます。では、正経十二経脈の一本一本を確認していきましょう。
■「手の太陰肺経てはいいんはいけい」
肺につながる太陰の手陰経。「中焦ちゅうしょう」(=胃のあたり)から始まり、大腸へいったん下がって、また中焦へ戻り、肺、喉、胸部上、脇、上肢の内側から肘へ、腕を下って親指の経 穴「少商しょうしょう」で終わるライン。その後、肺と表裏の関係である大腸につながる「手の陽明大腸経」と交わります。このライン上にある経穴は、ぜんそくや咳、鎖骨や上肢前側の痛み、冷え、風邪、悪寒、発熱などの治療に有効です。
大腸につながる陽明の手陰経。人差し指の経穴「商陽しょうよう」から手、腕、肩へと上がり、第7頸椎から鎖骨の上で二手に分かれます。ひとつのルートは、胸中、肺を通って大腸へと下ります。もうひとつのルートは、鎖骨の上から頸部、頬部へ至り、鼻の両側の「迎香げいこう」で終わります。ここから同じ陽明の足陽経である「足の陽明胃経」へとつながります。このライン上の経穴は、歯痛、咽喉痛、口の渇き、肩や腕の痛み、顔面神経麻痺、膝頭の痛み、下痢や便秘などの治療に有効です。
胃につながる陽明の足陽経。小鼻の横あたりからはじまり、目の経穴「承泣しょうきゅう」から下がって、下顎で二手に分かれます。一方のルートは、耳前からもみあげを通って額に至ります。もう一方のルートは、喉を通って鎖骨のくぼみでさらに2つのルートにわかれます。ひとつは、横隔膜を貫いて胃から脾に達します。もうひとつは、胸部、腹部を通って大腿、膝、下腿の全面を通って、足の人差し指の内側に至ります。このラインは、その後、足の親指の先で胃と表裏の関係である脾につながる「足の太陰脾経」と交わります。このライン上の経穴は、胃の不調、吐き気、鼻血、喉の腫れ、喉の痛み、口内炎、下腿の痛み、足の痛み、関節痛などの治療に有効です。
脾につながる太陰の足陰経。足の親指にある「陰白いんぱく」から始まり、うちくるぶしから足の内側前方を通って「衝問しょうもん」を通過し、腹部で2つのルートに分かれます。一方のルートは、体内で脾胃をつなぎ、胸部の奥から心につながる手少陰心経と交わります。もう一方は、脇の下でさらに分かれます。その一方は喉を通って舌に向かいます。さらにもう一方は、胸脇の「大包たいほう」に至り「手の少陰心経」につながります。このラインは、「足の陽明胃経」と対になっていて、下腹部や関節の痛み、膝の内側の痛み、月経不順などの治療に有効です。
心につながる少陰の手陰経。心臓から始まり、横隔膜を経て小腸に下がり、また心臓に戻った後、2つのルートに分かれます。一方は心臓から肺へ直行し、脇の下から、上肢の前面を通って、肘、手のひら側の小指の経穴「少衝しょうしょう」で終わります。もう一方のルートは、心臓から喉、目へと至り、手と表裏の関係である小腸につながる「手の太陽小腸経」と交わります。このラインは、胸の痛みや心痛、息切れ、ストレスによる不眠、手のひらの熱感など、循環器系の症状を緩和させ、心身をリラックスさせる効果を期待した治療に有効です。
小腸につながる太陽の手陽経。手の甲側にある小指先の「少沢しょうたく」から始まって、手の甲、上肢背面を上がって、肘、肩甲骨あたりを巡って、身体の前面に向かい、鎖骨あたりで2つのルートに分かれます。一方は心臓、食道、胃を通って小腸に至ります。もう一方のルートは、鎖骨の部分から顎に沿って頬にあがり、目尻から耳の経穴である「聴宮ちょうきゅう」で終わり、「足の太陽膀胱経」につながっていきます。このラインは、喉の痛み、下顎の痛み、頸部痛、ふくらはぎの痛み、胃痛や肩こりなどの治療に有効です。
膀胱につながる太陽の足陽経。目の経穴の「晴明せいめい」から額へ上がり、頭頂部で分かれます。一方は後頭部を通り、頭蓋内から脳へ向かいます。再び外へ出て、脊柱を挟むように左右を下がって背中を下り、腰の経穴「腎愈じんゆ」に至り、腎臓から膀胱へつながります。もう一方のルートは、頭頂部から肩甲骨内側を通って下がり、股関節を通過して膝でもう一方のルートと合流します。そして、脚の背面から外くるぶしを経て、足の小指先の経穴「至陰しいん」に至り、膀胱と表裏の関係である「足の少陰腎経」と交わります。このラインは、生殖や老化などに関係し、頭痛、腰痛、背痛、膝関節障害、足の運動障害、排尿異常などの症状に有効です。
腎につながる少陰の足陰経。足の小指先から起こって、足裏の経穴「湧泉ゆうせん」を通り、内くるぶし、膝、大腿の内側を通って上がり、会陰で2つのルートに分かれます。一方のルートは、会陰から腹、胸、鎖骨下の「愈府ゆふ」で止まります。もう一方のルートは、腎臓でさらに2つのルートに分かれます。ひとつは、肝、横隔膜を貫いて、肺に至り、喉、舌へとつながります。さらにもうひとつは、心につながり、胸中で心包とつながる「手の厥陰心包経」と交わります。このラインは、生殖などの生命活動や老化などと深い関わりを持ち、呼吸困難やふらつき、めまい、焦燥感、腰痛、背痛、下肢の脱力や痛みなどの治療に有効です。
心包につながる厥陰の手陰経。胸中から始まり、心包を通って枝分かれします。ひとつのルートは、横隔膜を下って、心包と表裏の関係である「手の少陽三焦経」と交わります。もうひとつのルートは、脇の下三寸の経絡「天池てんち」を上がって脇の下へ。さらに上腕、肘、手のひらの経穴「労宮ろうきゅう」を通って、中指先の「中衝ちゅうしょう」につながります。手のひらの経穴「労宮ろうきゅう」から枝分かれしたルートは、薬指先から「手の少陽三焦経」と交わります。このラインは、動悸、胸痛、手のひらのほてり、肘や腋の腫れや痛みなどの治療に有効です。
三焦につながる少陽の手陽経。薬指先の経穴「関衝かんしょう」から起こり、指の内側、腕、肩を通って、身体の前側に向かって、胸中で枝分かれします。一方のルートは心包を通って体内を下り、三焦とつながります。もう一方のルートは、胸中から上がり、耳、こめかみを経て、眉尻の経穴「糸竹空しちくくう」に至ります。さらにこめかみで枝分かれしたルートは、耳中から耳の前部、目尻から「足の少陽胆経」に交わります。このラインは、邪気などに対する身体の防御反応を司ったり、熱源や水を運ぶルートになっていて、難聴や咽頭痛、目や耳の疼痛などの治療に有効です。
胆につながる少陽の足陽経。目尻から耳を通って、耳の後ろの経穴「完骨かんこつ」を通って耳の後ろで枝分かれします。ひとつのルートは、側頭部を経て首に向かいます。鎖骨でいったん合流してまた枝分かれします。この一方のルートは胸中から肝、胆を通って、そけい部、陰毛の際を通って再び合流します。もう一方のルートは肩の経穴「肩胃けんせい」から、脇、身体の側面を通って、足の外側から外くるぶしを通って、足の薬指に向かいます。足の薬指と小指の間にある経穴「足臨泣あしりんきゅう」から枝分かれしたルートは「足の厥陰肝経」と交わります。このラインは、頭痛や頭部の症状、股、膝の痛みなどの治療に有効です。
肝につながる厥陰の足陰経。足の親指先から膝、腿の内側を通り、生殖器のそばを巡って、腹部、肋骨、胃、肝臓に至り枝分かれします。ひとつのルートは横隔膜を貫いて、喉、鼻、目と連絡し、額から頭頂部に抜けて、「督脈」と交わります。もうひとつのルートは、肝臓から横隔膜を貫いて、肺を通って「中焦ちゅうしょう」に向かい、「手の太陰肺経」と交わります。このラインは、血の働きにも関わり、そけいヘルニア、排尿困難、目の症状などの治療に有効です。
奇経八脈とは、正経十二経脈以外の経脈のことをいいます。五臓六腑とのつながりはなく、単独で存在するラインです。奇経八脈は、正経十二経脈を調整したり、協調させたりしています。奇経八脈の中でもとくに重要なものが以下の「督脈とくみゃく」と「任脈にんみゃく」の2つです。ともに、骨盤内の生殖器である「胞中ぼうちゅう」からはじまるため、受精や妊娠と深い関係が深いエネルギーラインであるともいえます。
■人体惑星試論(七星論)から見た症例ごとの判断基準
人体惑星試論(七星論)は、鍼灸師 新城三六先生が提唱している東洋医学。客観的診断と論理的治療によって数々の難病を完治させています。TTMAでは、その理論を元に症例ごとの判断基準をまとめました。これを参照することでセラピストのみなさんが施術において、限りなく治療効果を発揮できることと思います。東洋医学は「木火土金水」の5つで診断しますが、人体惑星試論(七星論)では、これに地(地球のエネルギー)と宙(宇宙のエネルギー)を加えて、より理論を明確にしています。
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