■五行論
五行論は陰陽論が発展したもので、自然界のものを五つの要素に分類した考え方です。万物は水、木、火、土、金の5つの元素に分けられ、それらがお互いに影響し合って宇宙が成り立っていると考えます。この五つは、アーユルヴェーダの五大元素(空、風、火、水、地)と似ていますが、少し違う考え方です。アーユルヴェーダの五大元素は、万物の性質を表すのに対し、五行説の5つの性質は、自然のエネルギーや動的な力のような概念です。
五元素はお互いに影響し合っています。となり同士の性質は相生関係であり、向かい合う性質は調整する相克関係となります。相生関係では、まず「水」から始まります。水を吸って「木」が育ちます。「火」は木によって勢いを増し、燃えた灰は「土」の養分となります。土の中では養分が固まり「金」を生じさせます。金属は溶けて「水」に戻ります。
相克関係では、向かい合う性質は、抑制し調整する関係です。「水」は「火」を消す力があり、勢いを調整します。「木」は「土」の養分を吸い、または根をはり勢いを調整します。「火」は「金」を溶かすことで抑制し、「土」は「水」の流れを止めます。「金」は「木」を切り落とし、抑制します。
このようにより勢いを増す関係と、調整し合う関係がうまく組み合わさって自然界のバランスが取れています。私たちもこのバランスに沿って生きることで、スムーズに生きられると考えられています。
五元素の体の機能を表す概念を五臓といいます。腎・肝・心・脾・魄の五種類があり、それぞれ五元素の水・木・火・土・金に対応しています。西洋医学で言う腎臓、肝臓、心臓・・・よりも広い意味を持っています。私たちの体の「水」のエネルギーに不調があるとき、それに対応する「腎」の機能が低下するという考え方です。五臓と合わせて五腑(六腑)という概念もあり、五臓に対応する腑があります。
五行説の元素は「水」から始まります。生命の根源です。植物で言うと種子の時期です。最も本質的なエネルギーで、種子のように内側に生きるエネルギーを蓄えています。一見停止しているように見えますが、内側には高い生命力や可能性、潜在能力を秘めています。そこから発展して、成長機能や老化とも関連してきます。また、水は潤す、上から下に流れていく、冷やす、といったこととも関連します。安定している「陰」であり、季節は「冬」、時間は「夜」です。存続する事が主な目的なので、体の機能は生殖に関すること、精神面では志すことに関わります。「水」は火を消すため、「火」を調整します。また、「木」に栄養を与え、「土」に抑制されます。五臓は「腎」、五神は「志」に対応します。
五行の第二元素は「木」です。「水」の種子の時期から、成長して、加速していく時期になります。方向性が定められる時期でもあります。植物で言うと新芽の時期です。季節は「春」、時間は「朝」です。人生では、動機付けされ、成長していくこと、そして周りに順応していくことと関わります。木は曲がりながらも上へ上へと伸びます。そのため、束縛や自由にできない環境を拒みます。体の機能でも、栄養を体中に送ったり、スムーズに動く働きを助けます。「木」は土の養分を吸うことから「土」を抑制します。また、「金」に調整され、「火」を助けます。五臓は「肝」、五神は「魂」に対応します。
五行の第三元素は「火」です。「水」の種子の時期から、成長して、加速していく「木」の時期が過ぎ、さらに拡張し勢いが最もある時期が「火」です。植物で言うと花が咲き開く時期です。季節は「夏」、時間は「正午」です。人生では、方向づけられた道筋を具現化させる時です。そのため「火」はアイデンティティと深く関わります。自分が本当に心から満足できる何かを見つけます。「火」は金属を溶かすことから「金」を抑制します。また、「水」に調整され、「土」を助けます。五臓は「心」、五神は「神」に対応します。
五行の第四元素は「土」です。「水」の種子の時期から、成長する「木」の時期が過ぎ、勢いと情熱がある「火」が過ぎると、それらが形となる「土」となります。「土」は具体化したり、形を作ったり、変容するエネルギーです。また、それを維持する働きもあります。植物で言うと実がなる時期です。季節は「長夏」、時間は「午後」です。心理面では、学習や思考に関連し、肉体面では体を形作る筋肉や、栄養に変容させたり吸収させる機能に関わります。「土」は「水」を抑制します。また、「木」に調整され、「金」を助けます。五臓は「脾」、五神は「意」に対応します。
五行の第五元素は「金」です。金が土が凝縮され純化してできるように、「土」までの時期に具体化したものを、純化させ、秩序を与える時期です。内省の時でもあります。外からの純粋なエネルギーを取り入れ、体内の汚れたエネルギーを手放していく交換の場でもあります。そのため、外界との境界線である皮膚とかかわりがあります。心理的には、個人と周りの距離がテーマになります。植物で言うと「金」は呼吸器の役割を果たす葉になります。季節は「秋」、時間は「夕方」です。「金」は「木」を抑制します。また、「火」に調整され、「水」を助けます。五臓は「肺」、五神は「白」に対応します。
凝っていると感じたときに押すと気持ち良い、いわゆる「ツボ」。 民間療法だと思われがちですが、世界的にも医療的効用が正しく認められている漢方医学の一つです。東洋医学の世界ではツボのことを正しくは「経穴(けいけつ)」と言います。「ツボ」の正体である「経穴」とは、身体の内側と外側を通過するエネルギーが通る道と考えられている「経絡」の中継地点であり、エネルギーが注がれる場所であるとされています。WHOの定義では全身のツボの数は361個。特に 筋と筋の間筋と腱の間、筋と骨の間、関節のふくらんでいる部分などに多く存在するとされています。
経絡とは、「ツボ」を結んだラインですが、これは気の流れる通り道。経絡は、内臓と連絡しているエネルギーラインです。東洋医学では、五臓六腑が元気になれば、身体全体が元気になるという考え方をします。エネルギーの通り道である経絡には、「正経十二経脈」と「奇経八脈」がありますが、陰陽でひとつと考えますから、7本のラインについてアプローチします。
経絡治療では、クライアントの症状から、以下のエネルギーラインごとの症状を検証し、ひとりひとりのクライアントに対して症状を緩和するためのアプローチを行っていくわけです。
水星エネルギー・・・足小陰腎臓経・足太陽膀胱経
金星エネルギー・・・手太陰肺経・手陽明大腸経
地球エネルギー・・・手厥陰心包経・手少陽三焦経
火星エネルギー・・・手少陰心経・手太陽小腸経
木星エネルギー・・・足厥陰肝経・足少陽胆経
土星エネルギー・・・足太陰脾経・足陽明胃経
宇宙エネルギー・・・任脈・督脈
何らかの原因で各臓腑の働きが悪くなると、それぞれの臓腑が支配している部位の変調が現れます。その影響が同時に経絡の変動としても現れます。つまり、ひとつの原因から徐々にすべてに影響していき、放っておけば、すべてが悪くなってしまうという考え方です。 |