■就業規則の変更
就業規則には法的な効力が認められており、それに反する労働契約は無効になります。従って、就業規則に定められた労働条件を変更するには、これを変更する必要がありますが、労働者にとって不利益な労働条件を一方的に課すような就業規則の作成又は変更が使用者に許されるかというと、原則として認められておりません。 しかし、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性格からいって、労働条件を不利益に変更する場合であっても、変更することに合理的な理由がある限り、「個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない」(秋北バス事件、最高裁昭和43年)と、裁判所も就業規則の不利益変更を認めています。つまり、就業規則の一方的な不利益変更は原則として許されませんが、合理的な理由が認められれば、不利益変更であっても就業規則は有効であると判断されます。 では、なにをもって合理的理由があるかといいますと、個々具体的に判断されるべきですが、判例などを見ると、事業経営上の高度の必要性の有無、不利益の程度(代償措置・経過措置の有無)、社会的妥当性、労働組合又は従業員の大部分の合意の有無などが合理性の判断基準になると思われます。
就業規則の変更によって賃金を引き下げる場合については、変更の内容が合理的か否か、具体的には、1.変更に業務上の必要性があるか、2.労働者の不利益の程度、3.それに対する代償措置があるか、4.同業他社と比較してどうかなど、変更の手続きが適正かどうかによって判断されます。裁判例は、それが労働条件中最も重要な賃金の低下という労働条件の改悪を意味するところから、とくに大幅かつ中高年労働者等の特定階層への狙い打ち的な急激な賃下げに対しては、賃下げを招く降格・降級、就業規則の変更などを無効とするなど慎重な判断を示しています。 また、労働協約の改定(締結)による場合であっても、その内容は法令や公序良俗に違反していないか、労組の意思決定や組合規約違反していなかなどが問題とされ、適正に手続きされていない場合は、労働者を拘束しません。 なお、労働条件の切り下げに同意しなかった労働者に対しては、整理解雇がなされる場合もありますが、これは整理解雇の4要件により判断することになります。就業規則や労働契約を変更する場合には、最低でも30日以上前に明示し、個人個人と面談を行い、双方の立場を踏まえて、互いに納得のいくように話し合いをしていく必要があるようです。
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